最新のロードマッププレビューシリーズへようこそ。このシリーズでは、Salesforce 製品の今後のビジョンについてお届けします。

IdeaExchange での投稿を通じて、私たちは進化し続けるプラットフォームにお客様を密接に結びつけることを目指し、よりクリアな対応を進めています。私たちの統合メタデータプラットフォームである Salesforce Platform には、データ、AI、セキュリティとプライバシー、分析、オートメーション、統合、ローコード開発機能などを統合しています。本記事では、Agentforce についてのロードマップ、特にカスタムエージェントの構築と管理について紐解いてまいります。まずはじめに、私たちのお客様、パートナー、そして世界中に広がる 2,100万人もの Trailblazer の皆様に心から感謝いたします。これまでに約 1,000 万のカスタムアプリケーションを私たちと共に作成していただきまして本当にありがとうございました。この 25 年間の間皆様から寄せられた信頼は私たちの進化を支える原動力となっています。そして現在、かつてない革新の最前線である Agentforce と共に、皆様とこの新たな可能性を共有させていただいていることがとても光栄です。

さて、現在のテクノロジーの状況を見ると明らかなこと、それは AI はすべてを変えたということです。AI は、お客様にとってアプリケーションの構築方法だけでなく、アプリケーションそのものにも変革をもたらしています。

私は Salesforce Platform の製品群を担当していますが、これから皆様と共に、どんなアプリケーションやエージェントを作っていけるのか、その可能性にこれまで以上にワクワクが止まりません。それでは、新製品や新機能、そして私たちのビジョンをお伝えしてまいります。


AI 時代における変化する期待への対応

AI はビジネスの運営方法やブランドとの顧客接点を変革しています。そして、お客様の期待もがらっと変わっています。お客様は待ち時間ゼロは当然のこととして、自分のことを踏まえてくれる、つまり「パーソナライズされた」対応や、共感的な、あたかも人間が対応してくれているかのような対応を期待しています。こうした高い期待は従業員にとって、大きなプレッシャーでもあります。多くの従業員の皆様は、限られたリソースの中で増加する需要や低付加価値業務への対応に苦しんでいます。結果として、従業員の皆様の負担は増大し、生産性が追いついていない状況になります。

CEO などビジネスリーダーの皆さんにも、こうしたお客様と、従業員にとってのプレッシャーについて認識されています。そのため、多くのリーダーにとって AI の活用は最優先事項となっています。しかし、IT リーダーの 88% は、データのサイロ化、統合の欠如、そしてリソース不足などにより、AI について安全かつ効果的に活用できる状況に至っていないと言います。

では、AI が反復的で時間のかかる作業を引き受けるような「仕組み」ができたら、こうした課題を解決できる方法になるのではないでしょうか?AI の活用により、従業員の皆様が高付加価値の業務に集中できる、そんな未来はすぐそこにきています。


2024年秋冬:AIの未来は「エージェント」にある

ここで良いお知らせがあります。私たちは現在、AI の第三波である「エージェント」の時代に突入しました。この変化は、AI が「支援的な存在」から「能動的な存在」へと進化したことを意味します。

エージェントは、詳細な指示を必要とせず、自律的にタスクを実行できます。エージェントを活用すれば、営業チームやカスタマーサービスチームなら顧客対応やフォローアップ、注文処理といったルーチンタスクから解放されますし、IT チームであれば、アプリケーション開発、テスト、デプロイのスピードを向上させることができます。法務部門や運用部門であれば、プロセスの合理化と手作業の削減が可能になるでしょう。

現在、エージェントは人間と連携しながら、または自律的に、大量のタスクを効率的に処理し、24 時間 365 日スケール可能な、個別対応を提供します。これにより、人間は戦略的で創造的な業務に専念できるようになるのです。

Agentforce を活用することで、AI は繰り返し作業やデータ駆動型のプロセスを効率的に処理し、人間は自分自身の得意分野で能力を発揮することができます。

Agentforce を構築する

AI エージェントには、ビジネスの進め方やお客様との関わり方が根本的に変わる可能性が秘められています。しかし、多くの人にとって、エージェントの構築プロセスは難しく感じられるかもしれません。これまで使っていたような古いツールを使う必要があると思い込んでいる場合や、新しいツールに不慣れな場合などもあるでしょう。ですが、エージェント構築は決して難しいものではないのです。私たちは、ローコードからプロコード(プログラミング)まで、組織内のあらゆる個人やチームが Agentforce を構築するためのツールを簡単に利用できるようにすべきだと考えています。

ローコードツール

私たちは、誰でも簡単に Agentforce を開発できるローコードツール群を提供しています。こうしたツールを利用いただくにあたって、コンピュータサイエンスの学位レベルの知識は必要ありません。これらのツールは、AI を手軽に活用できるべく、ユーザーがさまざまな部門の機能に合わせたエージェントを構築することを支援します。

  • エージェントビルダー
    エージェントビルダーを使用すると、ユーザーはメール、チャット、音声といったさまざまなチャネルにおいて、業務の流れの中でタスクを実行できる Agentforce エージェントを構築できます。エージェントが行うべきタスクやアクセス権限を定義し、既存のプロンプト、フロー、Apex、API とエージェントを接続し、エージェントがシステム内で実行できるアクションを制御できます。エージェントビルダーは、すでに一般提供開始 (以下 GA) 済みです。
  • Retriever Builder
    Retriever Builder は、ビジネス内の構造化データや非構造化データを対象にした Data Cloud での RAG をエージェントが実行できるようにします。顧客からの問い合わせへの回答や内部データの洞察を提供する際に、Retriever Builder を使用して迅速かつ正確に関連情報を提供するエージェントを構築できます。こちらもすでに GA 済みです。
  • プロンプトビルダー
    プロンプトビルダー(GA 済み)を使用すると、データやワークフローに基づいたカスタム プロンプトを使って、エージェントの応答を簡単に作成することができます。顧客対応用の個別化されたコンテンツの生成や、ビジネスロジックに基づいた応答を作成する場合に、AI が使用する言語やトーン、データを正確に定義することが可能です。新機能である項目ベースのマスキング(Field-Based Masking)では、プロンプトを支えるデータが特定の分類や機密レベルを持つ場合、またはプラットフォーム暗号化を使用して暗号化されている場合、そのデータが Einstein Trust Layer 経由でモデルに送信される前にマスクされることを保証できます。

こうしたツール群を使用いただくことで、深い技術的専門知識がなくても、さまざまなユースケースに対応したカスタムエージェントを各部門のチームが展開できるようになります。

開発者向けツール

ローコードツールは、ユーザーによるビジネス用エージェント構築のスピードを加速させますが、では、開発者が行うような、高度な作業にはどう対応すればよいのでしょうか?開発者の重要な役割を理解し、彼らの開発体験を向上させることを目指しているのが「Agentforce for Developers」です。

  • Agentforce for Developers : 開発者の生産性を大幅に向上させるツールです。このツールを使用すると、AI を活用してコーディングを加速し、脆弱性をスキャンし、テストプロセスを自動化することで、堅牢で安全な Agentforce エージェントをこれまで以上に簡単に構築することができるようになります。
    • 生成 AI によるコーディング: AI生成コードを活用し、コードの初期ドラフト作成からバグ修正まで、スピーディかつ正確にコーディングできます。
    • 脆弱性スキャン: 統合ツールでコードの脆弱性をスキャンし、アプリケーションを最初から安全に保ちます。
    • 自動化テスト: 開発プロセスの早い段階で問題を検出し、後のトラブルシューティングに費やす時間を削減します。

Agentforce for Developers を使用すれば、アプリケーションのセキュリティとスケーラビリティを確保しつつ、迅速なイノベーションが可能になります。Agentforce for Developers は現在 GA 済みです。

また、私たちのロードマップにおいて重んじているもう一つの部分は、ビジネスを拡大するためのコスト効率の良い方法を提供することです。 現在 GA として提供されている Platform Login ライセンス (※) は、シートベースのライセンスを必要とせず、カスタムエージェントへのアクセスを割り当てることが可能です。 このログインモデルは、必要に応じたアクセスが必要なユーザに対し、Salesforce のカスタムエージェントに社内アクセスを提供する、より柔軟で費用対効果の高い方法を提供するために最も適したライセンスです。

    (※)訳註 :   各ライセンスの比較は以下をご覧ください。

    Lightning Platform Starter、Lightning Platform Plus、および Salesforce Platform Login ライセンスで使用可能な機能

    Agentforce の大規模なテストと展開

    エージェントのプランニングと構築までがゴールではありません。テスト、展開、そして監視という開発ライフサイクル全体が、Agentforce 活用を成功させるために極めて重要です。こうしたライフサイクルを大規模に展開できることが、活用、定着までの流れに大きく関わってきます。

    • Sandbox とスクラッチ組織: 本番環境を再現して安全に変更を加えたり、新しいエージェントを開発・テストしたりできます。最新の機能強化により、Hyperforce 上での Sandbox の「クイック作成」が可能になり、従来より 4 倍速く Sandbox を作成できます。さらに、Data Cloud を活用した Sandbox 環境でのエージェント構築とテストも可能になります。
    • DevOps Center: カスタムエージェント開発プロセスの各段階を簡単に管理できます。バージョン管理の統合(BitBucket対応を追加)により、リリースがベストプラクティスに沿った形で進行します。
    • Scale Test と Data Seeding : 高トランザクション状況下で、データプライバシーを保ちながらエージェントやアプリケーションをテストするために、データマスキングや AI 生成の合成データを活用する機能を提供します。現在、新しい機能として Data Seeding が利用可能になりました。この機能を使用することで、任意の環境から高品質なデータを簡単に Sandbox に読み込むことができるだけでなく、AI を使用して本番データに類似したデータを生成することも可能です。このツールにより、より有意義なデータに基づいて開発とテストを行うことができます。Data Seeding は現在パイロット版として提供されています。

    Salesforce において、信頼は最も重要な価値です。AI に関しては、顧客の信頼を得る必要があります。これらのツールを活用することで、顧客に出力結果を提供する前に、自らテストと検証を行い、正確性と透明性を確保できます。そして、最高レベルの信頼性、プライバシー、セキュリティを維持しながら、AI 駆動のソリューションを提供することが可能になります。

    Agentforceのセキュリティとガバナンスを強化する

    信頼の話題に関連して、今日のAI主導の世界では、セキュリティとガバナンスがこれまで以上に重要になっています。すべてのビジネスにとって、安全で保護されたデータが最優先事項であるべきです。オンライン脅威の巧妙さと頻度が増す中で、私たちはビジネスと顧客を保護するためのツールを構築しました。

    • プラットフォーム暗号化
      機密データを暗号化し、キーライフサイクルを管理できます。最新の機能強化により、Data Cloud のデータを顧客管理鍵 (customer-managed keys) で暗号化できるようになりました。
    • データベース暗号化
      追加の暗号化層を提供し、ビジネス機能に影響を与えることなくデータを透過的に暗号化できます。データベース暗号化は 2024 年 10 月 31 現在、 2025 年 1 月に GA 予定です。
    • イベントモニタリングと項目監査履歴
      セキュリティイベントやデータ履歴の詳細なインサイトを得ることで、アクセスを監視し、業界規制を遵守できます。新機能であるEvent Log Objects により、低遅延でログにアクセスできるほか、拡張性が向上し、分析能力が強化されています。これらの最新機能を活用することで、セキュリティの向上、パフォーマンスの最適化、Salesforce インスタンス内のユーザーの行動に関する深い理解を迅速に得ることができます。イベントモニタリング、項目監査履歴、そしてこれらの関連強化機能はすべて現在 GA 済みです。
    • セキュリティセンター
      リアルタイムでセキュリティの状況を確認し、権限や設定を積極的に管理できます。Agentforce や Data Cloud と連携して動作します。セキュリティセンターと、そのすべての最新強化機能は現在 GA 済みです。
    • Data Mask
      テスト用の現実的なデータを提供しながら、機密データを保護します。Data Mask は大幅なアップグレードを受け、処理速度が 10 倍に向上しました。また、新しいユーザーインターフェースにより、設定が大幅に簡素化されています。
    • Salesforce Archive
      本番環境から移動させたいが、後のレポート作成のために保持しておきたい不要なデータをアーカイブできます。これにより、エージェントのパフォーマンスを向上させ、不必要なストレージコストを削減します。Salesforce Archive は 2024 年 10 月 31 日現在において、2024 年 12 月に GA 予定です。

    私たちのセキュリティに対する取り組みは、単なるツールの提供にとどまりません。お客様と連携し、セキュリティを開発プロセスのあらゆる段階に組み込むことを目指しています。引き続き、お客様からのフィードバックやご意見をお待ちしております。

    2024 年以降のプラン

    これから先、単にエージェントを作成できるというところからさらに踏み込んで、エージェントが他のエージェントを構築する手助けをするような未来をつくろうとしています。また、Agentforce は互いに協力し合い、ビジネスの成長を支援するようになります。エージェントがエージェントを構築し、エージェント同士が協働するということは、AI 開発における最もエキサイティングな新たな領域です。ビジネスの進め方や反復的、あるいは複雑なワークフローの自動化は今後も劇的に変化し続けるでしょう。私たちはその進化を促進するために、Agentforce の開発者向け体験をさらに強化し、生産性を向上させることに注力していきます。

    エージェントはますます複雑化していくことになるでしょう。それに伴い、開発ライフサイクルのあらゆる段階でセキュリティを統合する重要性も高まっていきます。そのため、私たちは DevSecOps への投資を続けています。DevSecOps は、セキュリティ、開発、運用を融合させ、脆弱性リスクを低減するとともに、お客様との信頼関係を守るためのフレームワークです。

    DevSecOps を活用すれば、開発プロセスの初期段階でセキュリティの問題に対応できるため、セキュリティ上のエラーにかかるコストを削減しつつ、納期を短縮することができます。また、自動化はこれにも重要な役割を果たします。セキュリティツールを開発パイプラインに統合することが不可欠であり、私たちはセキュリティとコンプライアンスを確保するために必要な手作業を減らす方法を模索し続けています。

    来年以降のロードマップは、スケーラブルで安全かつビジネスを変革する最先端の AI ツールを Salesforce Platform に組み込み、お客様に提供するという私たちの取り組みの証です。ローコード AI エージェントビルダーから高度な開発者向けツールに至るまで、私たちは皆さんが AI をこれまで以上に効果的に活用できるよう支援してまいります。

    Salesforce Platform がさらに進化と強化を進めていく中で、私たちは AI がますます主導する世界でお客様が成功を収められるよう、全力でサポートします。AI の未来は、人間とエージェントが協力して顧客の成功を推進することにあります。そして、その道を切り開くお客様を支援する準備はできています。

    リソース

    さらに詳しく知りたい方や、最新の機能やデモをご覧になりたい方は、Dreamforce 2024 での Platform Keynote (訳註 : 日本での Dreamforce 2024 Recap のイベントでの Platform 製品のセッションはこちらからご覧いただけます) をご覧ください。また、リソースガイドには、ガイド、Trailhead、デモなど、Agentforceの構築を開始するための役立つ情報が揃っていますので、ぜひご活用ください。

    ご意見をお聞かせください!

    2 分程度で終わる簡単なアンケートにご協力いただき、今後のクラウドロードマッププレビューにぜひご参加ください。

    ※ この記事は 2024 年 10 月 31 日に公開された下記の記事の翻訳となります。

    Build and Govern Your Agentforce — A Look at the Salesforce Platform Roadmap

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