変化が激しい現代のビジネス環境において、AI を最大限に活用するにはチームが孤立して作業する余裕はありません。しかし、一企業あたり平均 991 個ものアプリケーションが複数のシステム基盤(プラットフォーム)上で運用されているという調査結果もあります。アプリケーションの分散は、各システム間の断絶や、従業員やお客様にとって理想的ではない体験が生じる要因の一つです。アプリケーション プラットフォームを統一することで、こうした課題に対処しながら、部門をまたいだシームレスな作業が可能になります。さらに、企業内のあちこちに存在している各データをひとつのプラットフォームに接続し、集約することで、AI の力が強化され、より利用者が求める、ビジネスに即した、意味のある結果を提供することができます。

では、”統一プラットフォーム” のアプローチとは具体的にどのようなものなのでしょうか?また、それがどのようにして本当の意味でビジネスに役立つ AI エージェントの構築を可能にするのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

統一プラットフォーム上で AI エージェントが動作する方法の一例

従来のルールベースのシステムでは、項目の値に基づき、ビジネスプロセスに関与する全ての人に対し一律に通知を送信することが多く、それぞれの人にとって、大量に通知されてくる情報が自分に対して重要な情報とは限らないために、重要な情報が見逃される要因になります。一方で、人が定義したフレームワークを活用する AI エージェントは、項目値ベースではなく、その内容、つまり「コンテキスト」に基づいてスマートに対応してくれます。

こうした、動的かつコンテキストに配慮したアクションへシフトすることで、AI エージェントは複雑な多段階のワークフローを効率的に処理する能力を発揮します。しかしここに課題があります。AI エージェントの優れた能力も、アプリケーション、データが統一されたプラットフォームがなければ、AI エージェントはシステム間で情報を共有したり活用したりすることができません。

AI が本当の意味で真価を発揮するには、その基盤となるシステムが一貫して動作している必要があります。ここで、Salesforce のプラットフォームのアプローチが役立ちます。Salesforce のアプリケーション、データの統一プラットフォームでは、すべてが同じメタデータ基盤で構築されているため、カスタム ソリューションの構築や既成ソリューションの利用において効果を発揮します。これにより、部門やユースケースに関わらず、すべてがスムーズに連携する環境が実現できます。

AIエージェントの活用例:採用プロセスの効率化

例えば、企業が採用プロセスをより迅速に対応するためにカスタム AI エージェントを活用する例を考えてみましょう。

採用プロセスには、人事部門 (HR)、法務部門、財務部門、採用担当者が関わります。こうした関係者間のコミュニケーションを改善することで、プロセスの遅延を抑止するところに AI エージェントが活用できます。また活用することで、結果として新規採用者にとってもスムーズなオンボーディング体験が実現でき、チーム全体の満足度が向上できるでしょう。

AI エージェントはどのように動作するか:

  1. 候補者がオファーを承諾すると、自動的に採用関連の書類手続きを開始
  2. HR 向けのオンボーディング資料や雇用契約書のドラフトを候補者の情報で事前入力
  3. 法務には、会社のルールや業界のセキュリティトレンドに基づく重要な契約条項のレビューを通知
  4. 法務の承認後、財務部に給与設定の詳細を提供し、新規採用者の期待に沿った給与モデルを作成
  5. 各ステップで関連する通知を適切なタイミングで配信し、不要な情報は排除

AI エージェントは、新規採用者の状況を緊急性と重要性に基づいてそのタイミングで適切な人々と連携し、各ステップで必要な情報を確実に届けます。そのため、チームメンバーは自分に関係する通知だけを受け取ることができるため、不要な情報に煩わされることがありません。

このような AI エージェントは、意思決定にインテリジェンスとコンテキストを取り入れることで効率性を新たなレベルに引き上げます。特定の値や条件を一致させることに依存するルールベースの自動化や、静的な「if-then」プロセスとは異なり、エージェント駆動型の自動化の仕組みには「理解」と「解釈」の層が追加されるため、ユーザーにとって実際に意味のある成果をもたらすことができるのです。

このシナリオは、AI を活用する方法の一例に過ぎませんが、すべてのシステムをつなげていくことの重要性を示しています。AI エージェントが HR、法務、財務、採用マネージャーの各部門のステークホルダー間でデータを共有し、アクションできるようにすることで、必要なものを必要なタイミングで確実に届けることが可能になります。これにより、各ステップを手動で処理したり、固定ルールベースの自動化で対応したりする場合と比べ、プロセス全体がはるかに効率的になります。

もう一つおさえておきたいポイントがあります。AI が日常のワークフローでさらに重要な役割を果たすには、仕組みを支えるツールもつながっている必要があるということです。すべてをひとつのプラットフォーム上に集約し、統一することで、組織は AI エージェントやアプリケーションを活用したチームのコラボレーションをより簡単に実現できます

Platform Login ライセンスで低コストでより多くの方々の AI 活用を実現する

カスタマイズ、構築されたものでも既成のものでも、AI エージェントはワークフローをスムーズにし、生産性を高めるための決定的な要素となります。しかし、一部の従業員の方々は日常的にこれらのツールを使用するが、他の従業員の方々は必要な時にだけ使用しないというように、すべての組織のメンバーが AI エージェントやアプリケーションに対し常にフルアクセスを必要とするわけではないでしょう。

ここで役立つのが先日リリースされた Platform Login ライセンス です。このライセンスを利用することで、AIエージェントの力を必要な時だけ利用したいメンバーにフルタイムのライセンスではなく、使いたい時だけツールへのアクセスを提供することが可能です。こうした仕組みを併用することで、コスト効率を最大化しながら組織での AI 活用の範囲を拡大することができます。

これはどんなことか、上述の採用アプリケーションと AI エージェントの例を使ってみてみましょう。たとえば、新しい採用者を紹介した従業員が内部紹介ボーナスの対象となるケースを想像してみてください。この従業員が HR プラットフォームを時折しか利用しない場合、Platform Login ライセンスを使うとフルタイムのアカウントを持つ必要なく、一時的かつ必要に応じたアクセスを提供できます。

この仕組みにより、従業員は AI エージェントを活用して簡単に紹介状況を追跡できる一方、企業は使用されないライセンスへの投資を抑止できます。要するに、Platform Login ライセンスは必要な分だけ支払えばいいので、余計なコストをかけずに柔軟なアクセスを提供できる仕組みということです。

では、これが組織にとってどのような意味を持つのでしょうか?それは、タスク管理、プロジェクトでのコラボレーション、または特定のプロセスの情報共有のために、AI エージェントが誰にでもアクセス可能になることを意味します。Platform Login ライセンスを利用すれば、必要な時にAI駆動の生産性を最大限活用できるのです。

統一プラットフォームの活用が成功の無限の可能性を生み出す

Salesforce の統一プラットフォームのアプローチを採用いただくことで、カスタム構築の AI エージェントや既存のアプリケーションを使用する場合でも、一貫性とスケーラビリティにより、ビジネスの成功が促進されます。すべて統一された Salesforce プラットフォーム上で動作することで、エコシステム全体がシームレスにつながり、データ共有の容易さと効率性も向上します。さらに、安全な AI インフラストラクチャにより、Agentforce を保護し、AI の対応する結果の安全性を向上させることが可能です。

この統一プラットフォームが重要である理由は主に 2 つあります。1 つ目はデータへのアクセス向上、2 つ目はより効果的な AI エージェントです。すべてのAI エージェントとアプリケーションが同じメタデータ基盤を共有することで、よりリッチで統一されたデータソースを利用できるようになります。これにより、AI エージェントとアプリケーションがより多くのデータを活用し、意思決定に大きな影響を与え、ワークフローを改善します。

さらに、エージェントやアプリケーション間でデータがスムーズに流れていくことで、従業員は簡単に洞察を共有でき、AI ツールの効果を高め、共通の目標に向けたコラボレーションが容易になります。また、あらゆるカスタムユースケースに対応する AI エージェントを柔軟に構築できるため、ツールを日常的に利用する人にも、時折利用する人にも、生産性向上の恩恵を提供できます。

自分だけの AI エージェントを作ってみませんか?

AI の可能性に多くの人が期待を寄せていますが、活用のためにはその基盤となるプラットフォームのあり方を見直してみることは非常に重要なポイントです。統一プラットフォームアプローチを取り入れることで、強力な AI ソリューションを作成するためのツールをチームに提供できるだけでなく、プロセスに関係する複数部門間の摩擦を減らし、よりスムーズな連携を実現することができます。さらに、Platform Login ライセンスを活用いただくことで、これまで利用頻度とコストのバランスが難しかった人にも必要なタイミングで必要な分だけ AI エージェントの機能を提供することができます。不必要なコストや複雑さを伴うことなく、エージェントの可能性を最大限に活用できます。

Hiroshi Iwanaga
Senior Product Marketing Manager (Salesforce Platform)

※ 本記事はAll for One and AI for All: Unlocking AI Potential With a Unified Platform (2024.12.10 公開)の翻訳です。

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