はじめに
みなさん、こんにちは。株式会社セールスフォース・ジャパンでPlatform Specialistをしている塚本と申します。
Salesforceは当然認証機能を持っています。その認証機能をSalesforce外部のアプリケーションで利用することができます。Salesforceという信頼性の高いプラットフォームにユーザ管理と認証を任せることができますし、多要素認証やソーシャルログイン、パスワードレスログインといった認証機能も組み込めます。
今回はSalesforceはWebサービスの認証基盤としても使えるんだぞ、ということでDeveloper Editionで利用できるExternal Identityライセンスを使ってOpenID ConnectでSalesforceの認証を利用するサンプルコードをご紹介します。
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Salesforce Customer Identityを統合認証として採用するメリット
Salesforceを外部アプリケーションの認証で使うためのライセンスとしてはCustomer Identityがあります。Customer Identityは製品名であり、Salesforce組織の中のライセンスとしては External Identity がそれにあたります。Customer Identity はExperience Cloudの機能から認証機能のみを取り出した製品です。「認証機能のみ」とは言ってもユーザー管理に関する機能全般使えますし、カスタムオブジェクトも10個(内、8個はユーザー管理に関わるものに限定)使えますので、ユーザー管理ポータルサイトも運用可能です。
一般的な統合認証のメリット以外で、Salesforceを外部アプリケーションの統合認証として使うことのメリットは以下となります。
- CRMであるSalesforce Platformで外部ユーザの認証・管理を行うことで顧客情報管理とダイレクトに紐づいたユーザー管理ができる
- ユーザー管理プロセスをSalesforce Platformで実装できる
- Experience Cloudのビルダーを活用できるのでUI含めてノーコード・ローコードで実装できる
また、Experience CloudはCustomer Identityの機能を内包していますので、Experience Cloudサイトを既に運用されている場合、追加でCustomer Identityを契約しなくてもExperience Cloudユーザーを外部アプリケーションの認証で使うことができます。
Salesforceの設定
接続アプリケーション作成
接続アプリケーションを作ってOpenIDプロバイダーとしての設定をします。(「設定」-「アプリケーションマネージャ」-「新規接続アプリケーション」)
- “OAuth 設定の有効化”: 有効(チェック)
- “コールバックURL” : http://localhost:5000/callback
- “選択したOAuth範囲” : “一意のユーザー識別子にアクセス(openid)” , “ID URL サービスにアクセス(id, profile, email, phone)” を追加
- “サポートされる認証フローに Proof Key for Code Exchange (PKCE) 拡張を要求” : チェックを外す(無効)
デジタルエクスペリエンスサイト作成
デジタルエクスペリエンスを有効化します。(「設定」-「デジタルエクスペリエンス」-「設定」)
新規サイトを作成します。テーマは何でも良いですが、ここでは “Aloha” を選んでおきます。
ワークスペースから「管理」-「メンバー」で、”External Identity User”プロファイルを追加します。「設定」で “状況” を有効化します。
ビルダーを開き、「公開」します。
テスト用ユーザ作成
まずは取引先責任者ページでカスタマーユーザーを有効化するボタンを表示させます。オブジェクトマネージャで取引先責任者のページレイアウトを変更します。”モバイルおよびLightningのアクション” から “カスタマーユーザーを有効化” を “Salesforce モバイルおよびLightning Exprienceのアクション” にドラッグ&ドロップします。
任意の取引先責任者のレコードページから「カスタマーユーザーを有効化」ボタンをクリック
- “メール” : ご自分のメールアドレス
- “ユーザーライセンス” : External Identity
- “プロファイル” : External Identity User
メールアドレスにパスワード変更のメールが届くのでパスワード変更をします。
Relying Partyアプリケーション
今回はPythonのFlaskを使って手軽に作っていきます。Python環境の構築はここでは触れません。必要なライブラリをインストールしておきます。
.env
次に環境変数を定義するファイルを作っておきます。コンシューマー鍵とコンシューマーの秘密は接続アプリケーションの詳細画面から「コンシューマーの詳細を管理」ボタンから確認できます。
app.py
トップページのログインリンクからSalesforceで認証して、そのユーザの情報を表示するアプリケーションです。
OpenID Connectを処理するライブラリは Authlib を使っています。
templates/index.html
動かしてみる
作ったFlaskプログラムを実行しましょう。
ブラウザにて http://localhost:5000 へアクセスします。
「Log In / Register」リンクを押すとSalesforceのExperience Cloudログイン画面にリダイレクトされます。
作成したテスト用ユーザーでログインしてみましょう。Flaskアプリケーションに戻ってきてユーザー情報を表示します。
まとめ
Salesforceは、IDaaS(Identity as a Service)として統合認証をSalesforce以外のアプリケーションに提供できます。CRMでSalesforceをご利用いただいているお客様が外部向けの統合認証を作る際の有力な候補の一つになるかと思います。
OpenID ConnectやOAuthに準拠していますので、一般的なライブラリを活用して効率的に実装できます。
次回はAPI経由で認証を利用するヘッドレスID APIをご紹介する予定です。