【Agentforce Hackathon Tokyo】第 2 位電通デジタル: Agentforce で実現する「次世代型シナリオプランニング」

はじめに

みなさん、こんにちは。株式会社セールスフォース・ジャパンのトレイルブレイザーリレーションズチームで、Developer Advocate を担当している odasho です。

ハイレベルな競合がひしめく中で、見事 2 位に入賞したチーム: 電通デジタル のソリューション「Agentforce で実現する次世代型シナリオプランニング」について、そのアーキテクチャや技術的な実装ポイントを深掘りしてご紹介します。

マーケティング現場の「 PDCA 迷子」を解決する

多くの企業が MA（マーケティングオートメーション）ツールを導入していますが、現場のマーケターは「シナリオプランニング」とその後の「 PDCA 」において深刻な課題を抱えています。チーム電通デジタルは、自社の 100 社以上の支援実績から、以下の「現場のリアルな悩み」に着目しました。

ネクストアクションの欠如: データ分析レポートは出るが、「次に何をすべきか」の判断がつかず迷子になる。
ノウハウの属人化: シナリオ設計や KPI 設定の標準化ができておらず、担当者のスキルに依存している。
感覚的な議論: クリエイティブの方向性などが、データではなく感覚論で語られがちである。

これらの課題に対し、同チームはコンサルタントが持つ「勝ちパターン」のノウハウを Agentforce に移植し、組織全体で高度な PDCA を回せる仕組みを構築しました。

ソリューション: 集合知を搭載した「シナリオプランニング相談窓口」

提案されたソリューションは、Slack をインターフェースとし、複数の専門エージェントが連携してマーケターを支援する「シナリオプランニング相談窓口 Agent 」です。

ユーザー（マーケター）が Slack で相談を投げかけると、オーケストレーターとなる Agent が以下の専門 Agent たちにタスクを振り分け、戦略策定から改善案の提示までをワンストップで実行します。

戦略策定 Agent: 課題と組織の文脈を理解し、canvas 上でシナリオ施策とKPIを提案。
ペルソナ戦略策定 Agent (Vertex AI): シナリオに基づき、ターゲットとなる「高解像度なペルソナ（例：20代女性佐藤さん）」を仮想的に再現し、インサイトを提供。
データ分析 Agent (Tableau Next): Data 360 上のデータを分析し、「 40 代男性の反応が悪い」といった具体的なインサイトを提示。
シナリオ改善案出し Agent: RAG を参照し、過去の成功事例（勝ちパターン）に基づいた実践的な改善案を提示。

技術的ハイライト: マルチエージェント協調と Google Cloud 連携

開発者視点で特筆すべきは、単一の LLM ですべてを解決するのではなく、役割に特化した複数の Agent と外部システムを有機的に連携させている点です。

1. Agentforce と Google Cloud (Vertex AI) の連携

本ソリューションのユニークな点は、Salesforce 外の AI モデルともシームレスに連携していることです。

「ペルソナ戦略策定 Agent」の部分では、Google Cloud Platform の Vertex AI を活用しています。Agentforce からのリクエストを受け、Vertex AI 側で特定の属性を持つペルソナになりきって思考・発言させることで、「配信時間を変更すべき」「件名は短く」といった、より人間味のある定性的なフィードバックを得ることに成功しています。

これは、Agentforce がオープンなエコシステムとして、外部の強力なモデルやプラットフォームとも容易に接続できることを示す好例です。

2. Tableau Next と Data 360 によるインサイトの自動化

単にグラフを表示するだけでなく、Tableau Next の機能を活用し、データからインサイトを言語化して抽出させています。

Data 360 に統合された自社データを基盤とし、それをエージェントが読み解くことで、「集計作業」ではなく「意思決定」に直結する情報を Slack 上で提供することを実現しました。

3. Slack × canvas によるコラボレーション

Agent との対話はすべて Slack 上で行われますが、複雑な戦略や KPI の整理には canvas が活用されています。

「戦略策定 Agent 」が議論の内容を構造化して canvas に記録していくことで、チャットで流れてしまいがちな重要情報をドキュメントとして残し、人間とAIの協働作業（Co-work）をスムーズにしています。

導入効果と今後の展望

このソリューションにより、マーケティング業務の「 PDCA 設計・運用」フェーズにおいて、社員1人あたり 30 %の業務削減が見込まれています。また、過去の好事例に基づく改善案を適用することで、ROI を最大 22 倍へ引き上げるポテンシャルも秘めています。

チーム電通デジタルは、この仕組みを特定の保険会社だけでなく、支援実績のある 1,500 社以上のクライアントへ展開し、AI 時代における企業の組織成長と事業成長の両輪を加速させることを目指しています。

Agentforce、Data 360、そして外部 AI サービスの連携によって、高度なコンサルティングノウハウさえも「標準実装」可能であることを証明した、非常に先進的な事例でした。

Agentforce Hackathon Tokyo Demo Day に進出した全チームのプレゼンテーションは、前後編で以下からご覧いただけます。
【初代王者は誰だ？】革新的なAIエージェントデモ大会！Agentforce Hackathon Tokyo（前編）｜Salesforce
【AIエージェント開発の頂点へ！】未来を変えるAIエージェント決定戦！Agentforce Hackathon Tokyo（後編）｜Salesforce