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フローでナレッジ作成【Service Cloud OOTB #4】

 

OOTB (Out of the Box)は「箱から出て」という意味の英語表現です。IT業界においては「すぐに利用ができる」と言う意味で用いられます。Service Cloud OOTBはService Cloudと関連製品をご購入後に「すぐに利用ができる」内容を中心に発信します。開発者やシステム管理者といったService Cloudユーザに加えて、これからService Cloudのご購入を検討されるユーザへ、その価値、特徴、魅力、機能をお伝えします。

前回まで

Service Cloud OOTB #1〜#3では、Visual Remote Assistant (以下、VRAと記述)の概要、インストールと初期設定、運用のための追加設定を「すぐに利用ができる」内容としてご紹介しました。Service CloudとVRAを組み合わてより良い顧客体験の提供を支援します。ご興味がある方はぜひこちらのバックナンバーもチェックしてください。

今回のお題

本記事は、Service Cloud OOTBの第4弾として、ジャストインタイムの考え方で即時ナレッジを作成する考え方としてKnowledge Centered Service(以下、KCS)の概要をご紹介をした後に、ケースからナレッジを即時作成するフローの作成手順をご紹介します。30分ほどで設定いただけます。

KCS(Knowledge Centered Service)とは

KCSはコンタクトセンターを中心に注目が集まっています。KCSはツールではなくナレッジ活用の実践プロセスです。ここではこのプロセスのいくつかの特徴をご紹介します。

<KCSの特徴>

  • 問合せ対応時には必ずナレッジ検索を行う。
  • ナレッジ作成は全員で行う。
  • ナレッジ作成はジャストインケースではなくジャストインタイムで行う。(即時作成)

ナレッジ検索をして該当するものがなく新たな問題の解決方法を顧客に提供した場合、その対応内容には価値があります。価値のある対応方法を即時ナレッジ化し、組織の共有知識とすることで類似した問合せへの解決時間を短縮できるのです。

前提条件

KCSの基本的な考え方を抑えていただいたところで本題に入っていきますが、本記事の手順を実施するためには以下の設定が完了していることを条件としていますので事前にご確認ください。また、本記事でご紹介する手順は、Developer Edition環境(サインアップ方法はこちら)を利用しています。他の環境で実行される方は画面イメージや設定状況が異なる可能性がありますので予めご了承ください。

  • ログインユーザーはシステム管理者権限を持っており、ナレッジユーザであること。
  • ナレッジの有効化がされている組織であること。
  • ナレッジ設定にて以下の設定がされていること。
    • 「Lightning Knowledgeを有効化」がオンになっている。
    • 「記事の編集時のリッチテキストエディタの自動読み込みを有効化」がオンになっている。
    • 「知識ベースのデフォルト言語」が「日本語」になっている。
  • ナレッジオブジェクトに最低1つのレコードタイプが設定されていること。

 

ナレッジ作成フローの設定

設定のホームからフロー設定画面を表示し、「新規フロー」から「画面フロー」を選択します。次の画面で「自由形式」をクリックして、フローの作成を開始します。

事前準備

事前準備として、フロー内で使用する変数、数式、レコード選択肢セットを作成していきます。
「マネージャ」タブ、「新規リソース」ボタンから以下のものを順次作成します。

変数

  • recordId
    • データ型:テキスト
    • デフォルト値:{!$GlobalConstant.EmptyString}
    • 「入力で使用可能」にチェック
  • ArticleRTs
    • データ型:レコード
    • オブジェクト:レコードタイプ
    • 「複数の値を許可 (コレクション)」にチェック
  • RecordTypeId
    • データ型:テキスト
    • デフォルト値:{!$GlobalConstant.EmptyString}
  • RecordTypeName
    • データ型:テキスト
    • デフォルト値:{!$GlobalConstant.EmptyString}
  • NumOfArticleRecordTypes
    • データ型:数値
    • 小数点の位置:0
    • デフォルト値:0

数式

  • URLNameFormula
    • データ型:テキスト
    • 数式:{!recordId} & TEXT((NOW() – DATETIMEVALUE( “1970-01-01 00:00:00” )) * 86400000)

レコード選択肢セット

  • ArticleRecordTypes
    • オブジェクト:レコードタイプ
    • 絞り込み条件
      • IsActive = True
      • SobjectType = Knowledge__kav
    • 並び替え条件
      • 昇順:Name
    • 各選択肢の設定
      • 選択肢表示ラベル:Name
      • データ型:テキスト
      • 選択肢の値:Name
    • レコードタイプ 項目値をさらに保存
      • Id→RecordTypeId
      • Name→RecordTypeName

 

各要素の設定

ここから各要素を配置し設定を進めます。手順を簡素化するためにエラー処理の要素を省いておりますので、予めご了承ください。エラー発生時の画面要素については必要に応じて任意で追加ください。また、表示ラベルやAPI参照名は任意の値に変更いただいても問題ありません。

こちらが完成のイメージです。以下、各要素について順次説明していきます。

 

「決定」を配置し、ケースから渡されるrecordIdがnull値でないことをチェックします。
(ここではnullでない場合の分岐のみ作成していきます。)

 

「レコードを取得」を配置します。レコードタイプオブジェクトからナレッジのレコードタイプを情報を取得し、ArticleRTs変数にIDを保存します。ナレッジに複数のレコードタイプを設定している場合、どのレコードタイプでナレッジを作成するかを選択するために使用します。

 

「割り当て」を配置し、取得したレコードタイプのレコードの数を割り当てます。次の「決定」要素の判定で使用します。

 

「決定」を配置し、NumOfArticleRecordTypesに割り当てられたレコード数が1より大きいかの判定を行います。ナレッジのレコードタイプが複数ある場合は、レコードタイプの選択画面を表示する画面に分岐させます。

 

「画面」を配置し、画面に「選択リスト」コンポーネントを配置します。選択肢に選択肢レコードセットのArticleRecordTypesを指定し、取得したレコードタイプ名をリスト表示してレコードタイプを選択できるようにします。

 

「レコードを取得」を配置します。ケースから渡されるrecordIdでケースを検索し、ID、件名、説明の値を取得します。この情報を元にナレッジを作成します。

 

「画面」を配置し、ナレッジに登録するタイトルと概要をケースから取得した情報を利用して登録する画面を作成します。画面に「テキスト」コンポーネントを配置し、ケースから取得した件名をデフォルト値に指定します。次に「ロングテキストエリア」コンポーネントを配置し、ケースから取得した説明をデフォルト値に指定します。それぞれのデフォルト値はケースレコードを取得した要素名を参照して指定することが可能です。

 

「レコードを作成」を配置し、ナレッジレコードを作成する設定をします。オブジェクトにナレッジを指定、SummaryとTitleはReview Article Details画面に配置した概要、タイトルのAPI参照名を指定し、UrlNameには事前準備した数式のURLNameFormulaを指定します。

 

「決定」を配置し、RecordTypeIdがnull値かどうか判定します。ナレッジのレコードタイプを選択していた場合に、作成したナレッジに選択されたレコードタイプの値を登録する処理に分岐させるために使用します。

 

「レコードを更新」を配置し、作成したナレッジIDで該当ナレッジを検索、該当のナレッジのレコードタイプIDを変数RecordTypeIdの値で更新します。

 

「画面」を配置し、「表示テキスト」コンポーネントでドラフトのナレッジが作成されたことを示すメッセージを表示します。最後に各要素を接続し、「保存」をクリックし、フローの表示ラベルとAPI参照名を記載して完成です。

動作確認

デバッグ機能を使用して動作確認をします。任意のケースレコードIDをrecordIdに指定して実行します。

ナレッジに複数のレコードタイプを設定している場合はレコードタイプ選択画面が表示されます。任意の選択肢を選びます。


ケースに登録してある件名と説明がナレッジの件名、概要の初期値としてコピーされます。必要に応じて修正も可能です。


ドラフト状態のナレッジが作成されました。実際の運用では、ナレッジ管理者が内容を確認し、公開をすることで業務でナレッジを活用できる状態になります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ケース情報を元にナレッジを作成する画面と処理をノーコードで簡単に作成することができることを体感いただけたかと思います。今回はフローのみのご紹介になりましたが、以下の画面のように、このフローをEinstein Next Best Actionと組み合わせて、ケースの状態に合わせてナレッジ作成を推奨する表示を動的に表示することでオペレーターにナレッジ作成をより意識づける工夫もService Cloudで実現できます。

 

Service Cloudでは本記事で紹介しきれないほど多くの先進機能を有しています。その全てはお客様のビジネス成功を強力に支援するものです。今後こちらの記事として紹介する機会を設けていきたく思います。
Service Cloudについてご興味がありましたら弊社担当営業までお気軽にご連絡ください。

また、KCSについて詳細を確認されたい方は、HDI-Japan様が提供されているナレッジセンターサービス(KCS) ~新しいナレッジの考え方~をご覧ください。

参考情報

 

著者紹介

大辻 寛 (Hiroshi Otsuji)
株式会社セールスフォース・ドットコム
ソリューション・エンジニアリング統括本部
Cloud Specialist & Architect本部 Service Cloud Specialist

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